THE CELLを読む⑨
明日は用事があるので本日2回更新♪
酵母、植物、動物は系統樹でいうと同じくらいの近さである(前回を参照)。
真核生物の最小のモデル生物として酵母が選ばれた。
モデル植物として選ばれたのはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)である。シロイヌナズナはアブラナ科で大量に飼育でき、全ゲノム配列が得られている。
モデル動物として選ばれたのは線虫(Caenorhabditis elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、マウス(Mus musculus)、ヒト(Homo sapiens)の4種であり、どの種も全ゲノム配列が決定されている。
線虫(C. elegans)は小さく無害で、生活環(その生物の一生)は数日、生きたまま冷凍保存可能、遺伝学的に研究に適している(別の回で述べる)。
細胞分裂、細胞死などを理解し、発生生物学やがん研究に応用されている。
キイロショウジョウバエは遺伝学の研究に古くから用いられてきた。遺伝子が染色体上に存在すること、DNA上の遺伝情報が成体に反映されることはこのハエの研究から判明し、ハエの遺伝子からヒトの相同遺伝子の機能が分かった。
脊椎動物(背骨を持つ動物)のゲノムにあるほぼ全ての遺伝子にはパラログと呼ばれる類似遺伝子の重複がある。これはゲノムの各部分が別々に何度も重複した結果である可能性が高い。
パラログなどの類縁遺伝子は交換しても目的の機能を果たせる場合が多く、これを遺伝子余剰(genetic redundancy)と呼ぶ。ある遺伝子Aが機能を失っても類縁遺伝子BがAの機能を補うことができる、これは遺伝学研究にとっては好ましくない(各遺伝子の機能が分かりづらい)が、生物進化にとっては好ましい(エラーが生じても致死になりにくいので)。
哺乳類は全体として均一性の高い生物群である(ネズミもゾウも大きさ以外の構造はそんなに変わらない)。このような近い種同士の遺伝的類似性をより詳しく知るためにはオルソログの塩基配列かアミノ酸配列を比較するのが良い。
哺乳類のモデル生物はマウスであり、現時点でゲノムに人工的な変異を導入し遺伝子や翻訳部分の機能を調べることが可能である。
ヒトはモデル生物として扱いやすくはないが、これまでに蓄積された表現型(phenotype)(遺伝子変異によって生じた疾患など結果の部分)のデータが多く魅力的である。
遺伝子塩基配列の類似性を用いてモデル生物間の対応関係とモデル生物研究から得た知見を統合すれば、モデル生物全体に対する理解を深めることができる。
ヒトゲノム計画で膨大な数のヒトゲノムデータが得られたが、共通の配列だけでなく、変異の多様性も重要なデータである。
一章が終わりました。明後日からは二章から行きたいと思います。一先ずお疲れ様でした。