THE CELLを読む⑤
案ずるより産むが易し、みたいなことがありました♪
DNAの複製エラーがおこると塩基配列が変化する。これを(突然)変異(mutation)という。
DNAに変異が入ると生物も変化する。変異には生存に有利な変異、中立な変異、不利な変異の3パターンがある。生存している時点でほぼベストな状態であるので有利な変異はほとんどなく、反対に不利だと淘汰されてしまうので遺伝はしない。
したがって中立な変異が一番多くなる(中立説という)。
変異の入りやすさは場所にもより、生存に必須な遺伝子には変異が入りにくく、生存に必須でない・遺伝子をコードしていない箇所に変異が入りやすい。
最も変異の入りにくい場所としてリボソームを構成する2本のRNAがあり、生物種の系統解析の際はリボソームのRNA(ribosomal RNA)の変異に基づいている場合が多い。
遺伝子の変異は時に新たな遺伝子を作るが、ランダムな長い塩基配列を新たに作り出すことは不可能なので、既存の遺伝子から作られることになる。
既存の遺伝子から新たな遺伝子を作る方法は何通りか存在する。
(1)遺伝子内変異(intragenic mutation)…既存遺伝子の塩基配列が複製時エラーによって変化する
(2)遺伝子重複(gene duplication)…既存遺伝子が複写されて1個の細胞内に同じ遺伝子が2個出現、その後進化の過程で機能分化していく
(3)DNA領域の混ぜ合わせ(segment shuffling)…複数の既存遺伝子が壊れ再結合して、混合遺伝子ができる
(4)水平伝播(horizontal transfer)…DNAの一部がある細胞から別の細胞へ移る
*水平伝播とよく混同されるのは親から子への遺伝=垂直伝播(vertical transfer)である。水平は変異だが垂直はただの遺伝なので注意。
(2)の遺伝子重複では、片方の遺伝子が正常に機能していれば問題ないため、もう片方の遺伝子に変異が蓄積され別の機能を持つようになる場合がある。
このように同じ細胞(ゲノム)内に類縁遺伝子がある場合、これらの遺伝子の関係を側系遺伝子(paralog)という。
一方、共通祖先から分化した種AとBがそれぞれ類縁の遺伝子を持つ場合、これらの遺伝子の関係を直系遺伝子(ortholog)という。
これら類縁の遺伝子全般のことを相同遺伝子(homolog)という。
(4)は種内はもちろんだが異なる種間でも生じる。
良い例がウイルス(virus)である。ウイルスは自身の細胞を持たず、遺伝情報のみ保持している。ウイルスは他の生物(宿主)の細胞に寄生し、宿主ゲノムに自身のDNAを組み込んでとどまったり、何かのタイミングで(ゲノムから出てきて)大量増殖したりする。前者を溶原、後者を溶菌というが、この繰り返しの途中で宿主のDNA断片を含んだウイルスが別の生物のゲノムに組み込まれる場合がある。
このようにして水平伝播が行われる。これは原核生物で生じやすい変異であり、だからこそ細菌・古細菌は変異が起こりやすく莫大な種類が存在する。
真核生物でも遺伝情報の水平交換は生じる。有性生殖である。
垂直伝播は親から子へ全く同じ遺伝情報が受け継がれるが、有性生殖では一人の親から子へ全く同じ遺伝情報が受け継がれるのではなく、二人の親から子へランダムに遺伝情報が受け継がれる。
有性生殖は遺伝的多様性を産むため、生存に有利に働き、自然選択されてきた。
後半はここまで。明日は華金ですね。頑張って走り抜けましょう。